子供部屋

硝子のシューズは痛いだけ

「皆さんの為に全力を尽くし生きていくことを誓います」

 

濱田の震える唇から絞り出された愛の言葉に、今も私は縛りつけられている。

 

 

 

 

 

 

2013年冬に大阪松竹座でおこなわれた関西Jr.クリスマスパーティーG公演(濱田神山藤井メイン公演)のオーラスでの出来事だ。

ゲームコーナーの敗者である彼に科せられた罰ゲームは、自分のファンへの愛のメッセージだった。(今思えば罰は酷いな、罰とはw)

 

ゲスト含む仲間たちに冷やかされながら0番に座りこんだ彼は、いつものように照れ笑いを浮かべながら話し始めるのかと思いきや、今まで見たこともないような怖いくらいに真剣な顔で口を開いた。

 

最初に聞いたのは謝罪の言葉だった。

 

心配をかけたこと、迷惑をかけたこと…その両方が彼のせいではないにしろ。彼が伝えたかったことは「ごめんね」だった。

 

その後は入所してから今までのことをつらつらとけして上手ではないけれど誠実に言葉をつむぐ姿をただただ見つめることしか出来なかった。客席だけでなく、ステージにいた仲間たちでさえも。

 

濱田と濱田担の為だけの時間が終わり、水を打ったように静まりかえった松竹座。

誰か(確か淳太)の「泣いてるん?」という言葉を聞いてはじめて私は彼が涙を流していることに気が付いた。

 

「泣いてない!!!!」

 

そう叫び強がる彼の背中が子どものように小さく見えた。

 

 

濱田は泣かない。

 

どんなときも笑ってた。

 

だからこっちも笑うしかなかった。

 

なのに最後の最後で、Jr.として誕生日を迎える(た)最後に、涙を流した。それも自分のファンの為に。

 

 

「皆さんの為に全力を尽くし生きていくことを誓います」

 

冒頭の言葉で締めくくられた愛のメッセージは、今までのものと重みが違っていた。

 

簡単に「愛してる」と口にすることが出来る彼。それはあくまで「アイドル」濵田崇裕から発されるもの、だから安心できた、発信するアイドルと受信するファンの間だけで許される罪の無い遊びにしかすぎなかった。

 

それに、その言葉は自分のファンの為だけではなく関西Jr.のファン全体に向けられることがほとんどだった。

 

なのにどうして、流れる涙をぬぐいもせずに、最後の最後に、自分のファンにだけに向けた愛の言葉をくれたのか。「アイドル」濵田崇裕ではなくひとりの人間として誓いを立ててくれたのか。

 

言葉を口にする度に彼の身体から膜のようなものが剥がれ落ちるのが、私の目には確かに見えた。アイドルの膜が。

 

それは次のコーナーに移ると同時に、再び新しいものが彼にまとわりついて再び「アイドル」濵田崇裕が姿を現した。

 

 

 

ほんのわずかな時間だったけれども、確かにあの瞬間、私はひとりの人間としての濵田崇裕を目撃した。

何年何十年と時が経とうが遠い将来に彼の担当を降りるときが来ようが、2013年12月20日にある成人男性から貰ったひと足早いクリスマスプレゼント、いやプロポーズを私は一生忘れない。